結論
まず結論から言うと、最低でも HEAT20 G1 レベル、できれば HEAT20 G2 レベルを目指したいところです。
UA値でいうと、温暖地域(主に関東以南)では最低でも 0.58以下、できれば0.46以下(寒い地域ではより良いUA値が必要)を目指すべきとなります。
※ UA値は値が低いほど高断熱
どうしてそのレベルが必要なのでしょうか?そもそも HEAT20 って?という事を説明していきます。
日本の断熱事情
寒い日が続きますね。コロナ禍ということもあり、家のコタツで暖かく過ごしている方も多いかと思います。コタツって暖かくていいですよね。
一度入ったコタツからはなかなか出たくないものです。
でもそれはどうしてでしょう?家の中が(コタツ以外は)寒いということではないでしょうか?
冬なんだからどこでもそうでしょう?と思うかもしれませんが、実は(先進国中では)日本特有の事情だったりするのです。
ヒートショックでの死亡率
日本では、年間約19000人(推計)もの人がヒートショックで亡くなっているそうです。これは交通事故死の3倍以上にもなる数字です。
ヒートショックとは、温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することなどが原因となり起こる健康被害の事で、温かいリビングなどから寒い脱衣所に、そして熱い湯船につかる事で、体に負担がかかってしまい発生します。
日本でのヒートショック死亡率は、他の先進国と比べると明らかに顕著で、75歳以上の高齢者に絞るとこの傾向はさらに大きくなります。
海外との比較
ヨーロッパの国では、最低室温は18℃と法律で規制されている国もあります。
かたや日本では、当然室温に関する規制はありませんし、殆どの家が寒いのが当たり前ですから、冬はそういうものだと考えているケースが多いように思います。(私も昔は冬は家でも着込んで過ごすものだと思っていました)
ただ、家中全ての場所を暖房でガンガン暖めたら電気代が馬鹿になりませんから、一部の部屋のみエアコンを使ったり、コタツや電気毛布などの局所的な暖房を使い、あとは「我慢」でしのいでいるのです。
当然、温めている箇所とそれ以外で、相当大きな温度差が発生します。これが、ヒートショックを招いてしまっています。
日本が定める最高等級である「断熱等性能等級4」は、ヨーロッパの国々はおろか、お隣の中国、韓国でももはや性能が低すぎて住宅には使用されない基準です。
それも当然、二十年以上前に制定された基準が未だに「最高」なのですから。そしてその基準ですら守る義務はありません。
もはや、「断熱最高等級4」をあえて謳っているのは、低断熱性能のアピールでしかありません。
断熱の指標
国が定める断熱等性能等級の他、ZEH基準やHEAT20のグレードなどが断熱の指標として存在します。
高断熱をうたう建築会社の多くは、HEAT20 の基準を指標としています。
断熱等級
法律(住宅品確法)による断熱等性能等級の事で、一応現在(2022年2月)1〜4の等級が存在します。
- 等級4:平成11年基準。温暖地域でUA値 0.86(北海道などの寒冷地で 0.46)
- 等級3:平成4年基準。温暖地域でUA値 1.54(北海道などの寒冷地で 0.54)
- 等級2:昭和55年基準。温暖地域でUA値 1.67(北海道などの寒冷地で 0.72)
- 等級1:等級2にも満たない住宅。ほぼ無断熱。
等級は定められていますが、特にどのレベルを守らないといけないという義務はありません。
ZEH(ゼッチ)
環境省が定めた基準で、エネルギー消費の削減と、太陽光発電などでのエネルギーの創出を合わせ、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指しています。
断熱性能は、温暖地域で UA値 0.6(北海道などの寒冷地では 0.4)が求められます。
ZEH認定のためには断熱性能だけでなく、省エネ機器の利用などによるエネルギー消費量削減、太陽光発電利用などの再生可能エネルギー利用が必要です。
HEAT20
HEAT20 という団体が定めている基準で、ZEH 基準よりも高いレベルの断熱性能になります。
G1, G2, G3 の3グレードが定められていて、地域や条件によって多少変わってきますが、概ね下記を目指したレベルとなっています。
- G1: 冬に概ね10度を下回らない
- G2:冬に概ね13度を下回らない
- G3:冬に概ね15度を下回らない
具体的には下記のUA値になります。
おすすめの断熱レベル
おすすめは HEAT20 G2 グレードです。
「18度未満の寒い家」は脳を壊し、寿命を縮める
https://president.jp/articles/-/30551
という話にもある通り、家の温度は18度以上にするべきであることは WHO(世界保健機関)も強く勧告しています。
健康な生活を送るためには、18度以上の室温を家全体でムラ無くキープできる断熱レベルを目指すべきなのです。
そして、ランニングコストまで考えると、G2グレードが現状は最適
G1
このレベルであれば、高断熱をうたう建築会社であれば標準レベルで対応している可能性が高いです。
HEAT20 のシナリオでは、G1レベルで暖房コストをH28年基準から3−4割削減でき、快適性も上がります。
ただ、暖房の全館連続運転での運用はランニングコストが割高になるので、必要な部屋にエアコンを置いて、必要な時につける運用になるでしょう。そのため、温度ムラは若干発生すると思われます。
G2
長い目で見ると、コスパが最も良い選択肢だと思います。
初期費用は上がりますが、それほど大幅な追加コストなく達成できるレベルです。
冷暖房コストの削減幅を考えると30年住むのであれば元が取れるレベルですし、何より家中の温度ムラが少なく快適性がかなり上がります。
冷暖房の方式によっては、全館連続運転も(ランニングコストをそれほど上げずに)可能になります。
G3
G3レベルになると、それはもう超快適です。光熱費はかなり抑えられますし、真冬の窓際でも冷気を感じないほど暖かい家になります。ただ、コストもそれなりにかかり、現状では冷暖房コストの削減よりもいイニシャルコストが大きく上回ってしまう可能性が高いです。
ただ、今後エネルギー価格の高騰などで冷暖房コストが上がるとG3レベルのほうがコスパが良くなる可能性もゼロではありません。また、お金よりも快適性を再重視するような方であれば、G3レベルにしておけば満足度の高い家が建てられるでしょう。
それに、冷暖房不可が低い=省エネルギーですから、地球にも優しいですね。
UA値以外に気にしておくべき事
気密性能
断熱性能のUA値ばかりに目が行きがちですが、実は気密性能(C値)も快適な室内空間を作るのには重要になってきます。
C値が悪い=家の隙間が多い、ということ。完全防備のダウンジャケットを着ていても、首元、袖、腰回りの隙間が大きかったら寒いですよね?それと同じで、たとえHEAT20 G3レベルの断熱性能を達成していたとしても、気密性能が低かったら宝の持ち腐れになってしまいます。
また、断熱性能は高性能部材を使えば達成できますが、気密性能は施工のノウハウや丁寧さが必要になってきます。
お金さえかければ良いというものでもなく、しっかりした建築会社を選ばなければなりませんが、逆に言うとちゃんとした気密性能を出せる建築会社はしっかりした腕があるとも言えますので、建築会社探しの指標の1つにすると良いと思います。
日射取得・遮蔽
太陽の熱はとても大きく、冬に南面の大きな窓から入ってくる太陽の熱量はおおよそこたつ1台分にもなります。冬はその熱を取り込むことで暖房の助けになりますし、夏はそのまま取り込んでしまうと暑くて大変なことになります。
- 冬は太陽の熱を家の中にたくさん取り入れること。(日射取得)
- 夏は太陽の熱を遮って家の中にいれないこと。(日射遮蔽)
これらができていないと、断熱性能が高いの暖房費がかさんだり、夏暑くてたまらない、なんてことにもなりかねません。
断熱性能、気密性能とともに、こういった事を考慮した設計がされているかも、重視してみてください。
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